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山田美帆(やまだみほ) ■取材・ロケ・コーディネーター ・中央アジア/シルクロード カザフスタン キルギス ウズベキスタン(カラカ ルパクスタン) タジキスタン トルクメニスタン ・ロシア・コーカサスなど 旧ソ連 ・イラン ■映像翻訳(ロシア語/カザフ語など) ■添乗・ツアーコーディネート メールはこちらへ yksilkroad@yahoo.co.jp *写真・記事ともに無断転載禁止。ご使用に際しては、メールにてご相談ください。 ++++++++++++++ ブログパーツ
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2018年 02月 10日
昨日、平昌五輪の開会式を見ていて、各国選手団入場の際のNHKのアナウンサーのコメントには違和感を覚えることも少なくなく…
旧ソ連構成国、まずはバルト三国から。 (*順番は入場順) <ラトビア> 1991年に旧ソビエトから独立したバルト三国のひとつです。国旗の色、えんじと白を基調としたユニフォームを着けています。 <リトアニア> さあ、やってきたのはバルト三国の一つ、リトアニアです。旗手はバイアスロンのトマシュ・カウケナシュ選手。スキーのアルペン、バイアスロン、クロスカントリーに合わせて9人が出場します。第二次世界大戦中、ナチスドイツの迫害から逃れるユダヤ人に日本の通過ビザを発給した外交官、杉原千畝が駐在していたことで知られています。 <エストニア> バルト三国の一つ、エストニアです。クロスカントリーを得意としていまして、2006年のトリノ大会では3個の金メダルを獲得しました。 リトアニア紹介の際に、「第二次世界大戦中…」なんて言葉が出てきたから、何の話かと思いきや、杉原千畝。そういうスポーツとは関係のない日本よいしょは場違いな気がしました。 旧ソ連構成国、次はコーカサス地域。 <アルメニア> アルメニアです。黒海とカスピ海の間のカフカス地方に位置しています。クロスカントリーに出場するミカエル・ミカエリャン選手はクロスカントリー一家なんですよ。7歳上のお兄さんはバンクーバー、そしてソチの代表、お母さんは98年の長野大会に出場していて、さらにお父さんは現在コーチを務めています。 <アゼルバイジャン> アゼルバイジャンです。カスピ海に面しています。1991年、旧ソビエトから独立しました。選手は1人です。アルペンにエントリーしているパトリック・グラシュナー選手。ソチ大会に続いての出場です。 <ジョージア> 黒海沿岸の国、ジョージアです。3年前にロシア語由来のグルジアから英語のジョージアに呼び方が変わりました。今年に入ってこの国の名前よく聞くようになりましたよね。先日、大相撲初場所で初優勝を飾った栃ノ心のふるさとです。冬のオリンピックの出場は今回が3回目となります。 世界地図でアルメニアの場所を一発でさせる日本人は多くはないとは思いますが、「黒海とカスピ海の間のカフカス地方に位置しています」という説明は何だかなぁ…と個人的には思ったものです。アルメニア、黒海にもカスピ海にも接していないし(笑)。”カフカス地方”と聞いてピンとくる人が少なくないならば、バルト三国のように”コーカサス三国”的な括りをもっと定着させるべきなのではないかと感じた次第。 グルジアは「3年前にロシア語由来のグルジアから英語のジョージアに呼び方が変わりました」というコメントには突っ込みを入れたいところ。グルジア外務省からのお願いをすんなり受け入れてグルジア→ジョージアと呼び方を変えたのは日本外務省及び日本政府なので、「呼び方が変わりました」という表現には説明不足を感じました。いずれにせよ、かの国を”グルジア”的な呼び方をする国はロシア語圏だけではないので、”グルジア”=ロシア語由来というかの国の主張をそのまま鵜呑みにするのもどうなんだろう?と首をかしげたくなるのは私だけではないはず。英語での国名はずっと前から”ジョージア”ですが、グルジア語では”サカルトヴェロ”です。 余談ですが、開催国韓国も日本と同様、ジョージアと呼び方を変えています。 旧ソ連構成国、続いては中央アジア。 <ウズベキスタン> 中央アジアのウズベキスタンです。前回のソチ大会に続いてフィギュアスケートの男子シングルに出場するミーシャ・ジー選手は振付師としても活躍している方です。 <カザフスタン> 中央アジアにあるカザフスタン。1991年に旧ソビエトから独立し、1994年のリリハンメル大会から毎回冬のオリンピックに出場しています。冬のスポーツが盛んで、クロスカントリーやスピードスケート、バイアスロンなどでメダルを獲得してきました。 カザフスタンは旗手の衣装が毎回素敵なんですよね。 <キルギス> 中央アジアのキルギスです。シルクロードに位置する山と草原の国。経済の低迷や失業を背景にイスラム過激派組織に参加する若者が少なくないため、対策が課題になっています。 ウズベキスタンはミーシャ・ジー一人の出場なので、フィギュアスケートファンには嬉しい紹介でしたね。国的には今日から日本国籍保持者にビザ免除制度を導入していますし、”シルクロードの文明の十字路”的な表現を入れてほしいと思ったのではないかと…(笑)。 カザフスタンは2022年の冬季五輪開催を目指していましたが、最終プレゼンで北京に敗れ誘致が決まらなかった国で、アジア大会やユニバーシアードなどの開催国。中央アジア5か国の中では最もウィンタースポーツが盛んな国と言っても過言ではないかと。 フィギュアスケートファンはソチ五輪の銅メダリスト、デニス・テンに言及してほしかったことでしょうが。 多分、今回の平昌五輪参加国の中で一番酷い紹介のされ方だったのがキルギスだったと思います。 「シルクロードに位置する山と草原の国」…までは良くて、良質なパウダースノーのスキー場などもありますとかって続くのかと思いきや、「経済の低迷や失業を背景にイスラム過激派組織に参加する若者が少なくないため、対策が課題」…って、これ、ニュースでイスラム国に参加するキルギス出身者のリポートをしているのでもないのに、それ、オリンピックを見る人たちに必要な情報ですか? 政治じゃなくてスポーツの平和の祭典にそんな情報、なぜに必要だったのか理解に苦しみました。 そんなことより、選手団が被っていた民族の誇り”カルパック”にでも言及してあげるべきだったかと。 ある程度の原稿は作って中継しているのでしょうから、もっとまともなコメント、誰か考えてあげられなかったのが残念です。 旧ソ連構成国、まだまだ続きます。 <モルドバ> 東ヨーロッパ、モルドバです。ルーマニアやウクライナと国境を接しています。選手は2人。そのうちスキーアルペンのクリストファー・ヘアル選手は生まれはオーストリアですが、一昨年、モルドバの市民権を得ました。 <ベラルーシ> 旧ソビエトのベラルーシです。前回5つの金メダルを獲得しました。そのうちの3つはバイアスロンのダリヤ・ドムラチェワ選手です。ご主人も同じバイアスロン選手でして、オリンピック6大会で8個の金メダルを獲得したノルウェーのビョルンダーレン選手です。ただ今回出場権を逃してしまいました。あ、夫婦そろっての出場はならなかったんですね。 <ロシア> オリンピック旗を掲げて入場してきたのは、国ではなく個人として出場するロシア出身の選手たちです。OAR、オリンピック・アスリート・フロム・ロシア。ロシア出身のオリンピック選手です。IOC国際オリンピック委員会はロシアが組織的なドーピングとその隠ぺいを行っていたとして、ロシア選手団の出場を認めませんでした。過去にドーピング違反をしていないことなど、厳しい条件を満たした選手に限って個人の資格での出場です。 <ウクライナ> ウクライナです。旧ソビエト崩壊後の1994年リリハンメル大会から冬のオリンピックに出場しています。今大会にエントリーしている選手は33人。これはこれまでで最も少ない人数です。ウクライナのオリンピック委員会によりますと、経済状況やロシアとの紛争の影響は否めないとのことです。 モルドバはNHK的には旧ソビエト構成国ではなく、東ヨーロッパに分類されているのですね(笑)。 ウクライナに関しては、参加選手の人数が少ないからといって、ウクライナオリンピック委員会の主張をそのまま伝える必要、あったのかな?何に忖度して伝えたの?と思ってしまいました。 旧ソ連構成国は15か国ありますが、トルクメニスタンとタジキスタンは出場していません。 続いては、”16か国目のソ連構成国”などと呼ばれていたこともあったモンゴルの紹介を。 <モンゴル> モンゴルです。今回が冬のオリンピック14回目の出場ですが、まだメダルの獲得はありません。雄大な自然を生かしてクロスカントリーが盛んです。 続いて、東欧諸国の紹介を。 <ルーマニア> 東ヨーロッパのルーマニアです。冬のオリンピックは21回目の出場という歴史を誇ります。これまで獲得したメダルは一つ。1968年のグルノーブル大会、ボブスレーの2人乗りで銅メダルを獲得しました。今大会は男女合わせて27人の選手がエントリーしています。 <モンテネグロ> こちらはバルカン半島にあるモンテネグロです。かつては旧ユーゴスラビアに属していましたが、2006年に独立、今回が冬のオリンピック三回目の出場です。 <ボスニアヘルツェゴビナ> ボスニアヘルツェゴビナです。旧ユーゴスラビア時代の1984年、首都サラエボで冬のオリンピックが開かれました。サッカー日本代表のハリルホジッチ監督、そして元監督のオシムさんの出身地でもあります。 <ブルガリア> 東ヨーロッパのブルガリアです。元大関琴欧州の鳴戸親方の出身地です。冬のオリンピックは20回目、バイアスロンやクロスカントリーなどでこれまで6個のメダルを獲得しています。今回は男女合わせて21人の選手がエントリーしています。 <セルビア> セルビアです。旧ユーゴスラビアの国の一つです。国旗の色、赤青白のユニホーム姿での入場です。旗手を務めるのはアルペン女子のネベナ・イグニャトヴィッチ選手。セルビアが初めて冬のオリンピックに参加したバンクーバー大会から3回連続での出場です。 <スロバキア> スロバキアです。1993年にチェコと分離して独立国家となりました。これまで冬のオリンピックで獲得したメダルは5つ。そのうち3つを占めるのがバイアスロンのアナスタシア・クズミナ選手です。今大会女子7.5キロで3連覇がかかっています。アルペンも強くなってきました。 <スロベニア> スロベニア。旧ユーゴスラビアから独立した国の一つです。前回は8個のメダルを獲得。冬のオリンピック史上最高の成績を収めました。今回はアルペンやスキーのフリースタイル、スノーボードなどに合わせて71人がエントリーしています。ウェアのこの紺、薄緑 、白の三食はスロベニア選手がよく身に着ける色で、スロベニアを象徴する色の組み合わせだそうです。 <アルバニア> アルバニア。バルカン半島の西部に位置しています。冬のオリンピックは4回目、前回アルバニア初の女性選手として出場したアルペンのスエラ・メヒネ選手が今回もエントリーしています。今大会は出場選手2人ともアルペンの選手となっています。 <チェコ> チェコです。エントリーしたのは95人。前回の大会では2つの金メダルを獲得。スピードスケートのマルティナ・サブリコバ選手は5000mでバンクーバー大会から2連覇を達成しました。今回で4回目のオリンピック出場です。男子アイスホッケーチームは1998年の長野大会で金メダル、トリノ大会で銅メダルを獲得し、今回もメダルを狙います。長野オリンピックの金には国中が湧きかえって、ナガノという地名はファンの間ではメモリアルな地と記憶されているそうです。 <コソボ> バルカン半島のコソボです。2008年にセルビアからの独立を宣言しました。オリンピックに初めて出場した2年前のリオデジャネイロ大会では柔道で金メダルを獲りました。冬は初出場となる今大会、アルペンの男子に選手が1人エントリーしています。 <クロアチア> バルカン半島にあるクロアチアです。これまで冬の大会7回の出場で獲得した11個のメダルのうち10個をアルペンの国民的英雄コストリッチ兄弟が獲得しています。で、今回、お兄さんのイビッツァ選手は出場を逃してしまいました。一方2007年に引退した妹のヤニツァさんは現在クロアチアのスポーツ庁長官を務めています。 <ポーランド> 東ヨーロッパのポーランドです。冬のオリンピックには第1回から参加し、通算20個のメダルを獲得しています。旗手を務めるのは、前回スピードスケートでポーランド史上初めての金メダリストとなったズビキニェフ・消防士の仕事をしながら選手活動をしているそうです。 <マケドニア> 続いてマケドニアです。1991年に旧ユーゴスラビアから独立した国です。6大会連続の出場ですが、まだメダル獲得はありません。今回はすきーのアルペンとクロスカントリーに男女合わせて3人が出場します。 <ハンガリー> 東ヨーロッパのハンガリー。冬のオリンピックには第1回大会から出場していました。通算6個のメダルはすべてフィギュアスケートで獲得してきましたが、最近ちょっとメダルから遠ざかっています。スキーのアルペンにエントリーしているマルトン・ケイケシュ選手は以前日本に住んでいたことがあるそうです。ですから日本で関わった皆さん応援していらっしゃるかもしれませんね。 旧ソビエトと旧ユーゴスラビア、旧ソビエトに至っては解体・消滅してすでに25年以上経っていますが、国がなくなってから何年経過すれば”旧○○”という形容詞が外れるのでしょうね??? …と、書き起こした国は以上です。 まあ、知っている国だからこそ、「あれれ?この紹介、なんか変じゃない?!」と首をかしげることも出来るわけで、そうでなければ軽く聞き流すか、紹介されたイメージで記憶に残っていくのでしょう。 選手団の規模によっても紹介時間は左右されますし、日本人視聴者には全くなじみがなかったり、なかなかキャッチーなコメントをするのも難しい国もあるのも事実ですが、こういう原稿をきちんと書いて公正に紹介してこそ公共放送のNHKなのではないだろか…と改めて思った次第でした。
by yksilkroad
| 2018-02-10 22:36
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Comments(2)
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キルギス人です
at 2018-02-12 17:22
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こんにちは。素敵な記事を読ませていただきました。ありがとうございます。実は日本に住んでいるキルギス人も著者と同感です。アナウンサーがおっしゃったことは、オリンピックという大舞台で言うべきではないことです。2020年のオリンピックに同じことが繰り返されないようNHKに手紙一通送った方がいいのではないかと皆が言っています。
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yksilkroad at 2018-02-14 23:13
コメントありがとうございます。そうなんですよね。何と言うのか、意味不明な上から目線の場違いな紹介内容という感じでしたよね。キルギスご出身の方にはさぞかしショックだったのでは…と思います。NHKの報道関係者にちゃんとした中央アジアの専門家がいないのが痛いのではないかと。一時期、誘拐婚の心無い報道が目立っていた頃もありましたが、在日大使館とか、きちんとしたルートで送ってもらうのがベストかもしれませんね。
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